――トヨタサービス技術検定1 級の合格を目指し、日夜勉強中という平井さん。高校は普通科に通いながらも「好きな事を仕事にしたい。」との思いが高まり、周囲の反対を押し切ってトヨタ神戸自動車大学校に進学したそうです。どうでしょう、念願かなって希望のお仕事をされる感想は?
「今だから言えますが、それが失敗だったんじゃないかと悩んだ時期もありました。学生時代も僕なりに勉強してきたつもりだったんですよ。それなのに、いざ現場へ出てみると何もできなかった。まさに挫折ですよね。もう車なんか嫌いだとさえ思いました。趣味の範囲で留めておけば、こんな気持ちになることもなかったんじゃないかって。」
――“こんなはずじゃないのに”という焦りと不安。多くの人が社会に出て一度は味わう気持を平井さんはどうやって乗り越えてきたのでしょうか。
「最初は車に触らせてももらえませんでした。僕にできる事は本当に限られていましたから当たり前かもしれません。だから、時間の許す限り先輩方の作業を見ていました。何もできなくても、仕事の中に身を置く事で何かを吸収できるんじゃないかと必死でした。それに、先輩方の励ましがあったからこそ乗り越えられたのだと思います。だからこそ、3年目になって、ようやくエンジンを降ろす作業を任せてもらえた時の喜びは忘れられません。この時初めて、少しはクルマとの絆を結べたかなって思いました。」
――そんな平井さんの一番嬉しい瞬間は、お客様が笑顔で帰っていく時。
「お客様が1台の車と付き合う時間は、昔と比べて確実に増えているんです。それは僕たちの出番も増えているということ。ひとりでも多くのお客様から笑顔を見せていただけるように、まだまだ勉強することが山積みです。」
――言葉の端々に、車に対する、そして仕事に対する並々ならぬ思い入れを感じます。
「不思議なもので自分達が手掛けた車は覚えているんです。街中で走っているのを見かけた時は、もう気になってしょうがないです。」
――失礼しました平井さん。それはもう“思い入れ”なんかではなく“愛”ですね!